逃げゆかば行かん

塾講師が教える、試験当日の予想外ハプニングへの心構え
受験当日は万全を期したつもりでも、思いがけない出来事に見舞われることがあります。例えば「二度寝すれば起きられないような早朝に目が覚めてしまった」「試験前に家で集中できず、予定より早く家を出たら会場に早く着きすぎて開場前だった」など、誰でも経験しうることです。そんな状況に直面したとき、どのように対処し、気持ちを整えればよいのでしょうか。真面目な塾講師の視点から、当日の心構えや先輩受験生・講師のエピソード、そして不安への向き合い方を考えてみましょう。
予定より早く起きてしまったら:二度寝は禁物?
緊張のあまり試験当日の朝に予定時刻より早く目が覚めてしまうことは珍しくありません。「もう一度寝ようか」と迷うかもしれませんが、二度寝には要注意です。代々木ゼミナールのコラムでも「あまり早く起きすぎると油断して二度寝してしまう危険性」が指摘されています 。一度起きてしまったら、ベッドでだらだら過ごすより思い切って起床したほうが良いでしょう。実際、ある受験生も「二度寝すると本来起きたい時間に起きれなくなるし、ベッドから出られなくなるので起きます」と話していました 。二度寝してしまい寝坊するケースは受験でもよくある失敗談です 。早起きしすぎても二度寝せず起きて行動を開始する——これがまず大切な心構えです。
では予定より早く起きた朝の時間をどう過ごすか。ポイントは普段どおりの生活リズムを保つことです。当日の朝に慌てて新しいことをするのではなく、顔を洗って着替え、朝食をとるなど「いつもどおりのルーティンを守ると平常心が保てます」と指導する先生もいます 。人間の脳は起床後約4時間後に最も活発になるとも言われます 。極端に早すぎる起床はかえって疲労を招きますが、試験開始にピークを持っていける適度な早起きであれば、脳のウォーミングアップ時間が確保できるとポジティブに捉えましょう。
試験当日の朝、家で集中できないときは
試験当日の朝に勉強しようとしても、緊張で頭に入らなかったり集中できなかったりすることがあります。それは決して不安になることではありません。直前期に新しい知識を詰め込むよりも、これまでの復習や確認にとどめたほうが良いという指導者も多いからです。実際、試験直前には「暗記モノを1つでも覚えるというより、今までの勉強をふりかえってみることが大事です」とのアドバイスもあります 。家で集中できないと感じたら、無理に難しい問題に取り組むのではなく、チェックリストの確認や持ち物の最終確認など軽い作業に時間を使ってもよいでしょう。前日までに受験票や筆記用具の準備を終わらせておけば、当日の朝にバタバタせずに済みます 。
早めに家を出る判断自体は間違っていません。むしろ、当日は時間に余裕を持って行動することが鉄則です。電車の遅延や道に迷うトラブルがあっても間に合うよう早めに出発すれば平常心で試験に臨めます 。家で落ち着かないときは、いっそ早めに会場へ向かってしまうのも一つの手です。ただし次に述べるように、あまりにも早く着きすぎると別の問題が発生しがちなので、その点だけ注意しましょう。
試験会場に早く着きすぎたらどうする?
会場に予定より早く到着しすぎてしまうのも、受験生あるあるの一つです。極端な早着にはデメリットもあります。中学受験指導の現場からは「早く着きすぎても良い事はほとんどない」という声もあります 。学校によっては開場時間まで門の中にも入れず、寒空の下で待たされることもあります 。実際、京都大学受験時に不安で1時間以上前に着いた受験生の体験では、集合時間まで40分以上寒風にさらされて手がかじかみ、その影響で最初の科目の答案作成に支障が出たそうです 。みんなが参考書を広げているのを見て「自分だけ受かるのか」と萎縮してしまい、不必要なプレッシャーを感じたとも述懐しています 。こうした体験から、「あまりにも早く着きすぎると私のようになる可能性があります。集合時間の15分前くらいがベストではないか」というアドバイスも残されています 。
とはいえ、受験生としては遅刻のリスクを考えると早めに出発したいもの。理想的な到着目安は試験開始の30分前です。多くの先輩受験生も「試験開始の30分前には会場に到着するようにした」という声を残しています し、塾の先生も「30分前に着く予定で家を出るのがベスト」と助言しています 。30分前到着であれば、不測の事態へのバッファを確保しつつ、早着しすぎて負担になることもないちょうど良い線でしょう 。
では予想以上に早く着いてしまった場合はどうすればいいでしょうか?その場合は無理に会場前で緊張したまま待つより、いったん落ち着ける場所で時間を潰す工夫をしましょう。Yahoo!知恵袋でも「会場が開いてないほど早い場合は、防寒対策をして門の前で勉強しながら待つか、マックとか喫茶店で勉強するのがよいのでは」というアドバイスがありました 。周辺にカフェがあれば入って温かい飲み物でも飲みながら時間を調整するのもおすすめです。実際、受験指導のプロも「もし時間が余りそうなら、近所の神社へ寄っていくとか、会場近くのカフェでリラックスするなど、緊張をほぐす行動をしてみるのもよい」と述べています 。早く着きすぎてしまった自分を責める必要はありません。「自分は遅刻の不安を減らすために行動したのだ」と前向きに捉え、「今できる最善」を考えて行動することが大切です。
待ち時間の過ごし方:心を落ち着ける工夫
試験会場に着いてから試験開始までは独特の緊張感があります。その待ち時間をどう過ごすかで、心の状態は大きく変わります。周りの受験生に影響されず、自分のペースで心を落ち着ける工夫をしましょう。以下は先輩受験生たちの実例です。
• 音楽を聴く: 「試験開始の30分前に着き、始まるまでは好きな音楽を聴いたり周りの様子を見たりしていた」という声があります 。リラックスできる曲をイヤホンで聴けば、自分の世界に集中できて緊張を紛らわせる効果があります。
• 温かい飲み物を飲む: 「普段から好んで飲んでいる甘いお茶を飲んで気持ちを落ち着かせた」という体験談もあります 。ほっとする飲み物で心身をリラックスさせるのも一つの方法です。
• 仲間と言葉を交わす: 「同じ会場で受ける友達と励まし合い、緊張をやわらげた」という受験生もいました 。知り合いがいれば軽く会話することで笑顔になれ、気が紛れることもあります。ただし、友達との待ち合わせがうまくいかず焦ってしまうケースもあるので 、無理に探し回るのは禁物です。会えたらラッキーくらいの気持ちでいましょう。
• トイレは早めに: 朝の会場のトイレは長蛇の列になりがちです。「単語帳を持って並んで待つなど工夫した」という報告もあります 。試験直前に慌ててトイレに駆け込まなくて済むよう、早めに行っておくと安心です。
• 軽く見直し・ルーティン確認: 最後にノートや参考書をパラパラと眺めて知識を再点検する人も多いでしょう。しかし闇雲に詰め込もうとしても逆に不安が増すことがあります。代ゼミのコラムでは「ノートや参考書を見てこれまでの努力を振り返り、『こんなに頑張ったんだから大丈夫!自分ならやれる!』という自信や勇気を手に入れよう」とアドバイスされています 。今まで自分が使い込んできた愛着あるテキストを眺め、「ここまで頑張った自分」を信じてあげる時間にすると良いでしょう。
こうした待ち時間の過ごし方は人それぞれですが、共通して言えるのは**「自分の心が落ち着くこと」を優先する**ことです 。周囲の受験生の様子が気になるかもしれませんが、周りと比べても緊張が高まるだけです。人は人、自分は自分と割り切り、自分にとって最善のリラックス法で本番直前のメンタルを安定させましょう。
緊張や予期せぬ事態への対処法
受験当日は何が起こるか分かりません。不測の事態に直面したときにパニックにならないための心構えも身につけておきましょう。鍵となるのは深呼吸と開き直りです。試験本番で極度に緊張してしまったら、まずはしっかりと深呼吸をしてみましょう。息を吸うよりも吐くことに意識を向け、吐く時間を吸う時間の2倍くらいにすると副交感神経が優位になり緊張が和らぎやすくなると言われています 。実際に「焦ったときは一旦ペンを置いて深呼吸し、遠くを見ると冷静さを取り戻せる」という助言もあります 。試験前や休み時間に鼓動が速くなってきたら、スーッと息を吐き出して気持ちを落ち着かせましょう。
もしハプニングが起きてしまった場合は、決して自分を責めないことです。寝坊やアクシデントで予定通りにいかなかったとき、「なんで自分はできないんだ…」と落ち込む時間はもったいない 。大事なのは起きてしまった事実を素直に受け入れ、すぐに気持ちを切り替えて**「今やるべきこと」に集中する**ことです 。例えば寝坊に気づいたら、まず深呼吸して優先事項(着替えや持ち物確認)を冷静にこなし、タクシーより電車を選ぶなど最善策を考えて実行します 。試験開始に遅れそうでも諦めず、まず会場に向かうことに全力を尽くしましょう(公共交通機関の遅延であれば特例措置がある場合もあります )。
また、日頃から**「最悪の事態をイメージトレーニングしておく」**のも有効です。受験当日に起こり得るハプニングを想定し、それを乗り越えるシミュレーションをしておくと、いざという時にも慌てず対処しやすくなります 。トップアスリートも取り入れているメンタルトレーニング法で、「○○になったら△△しよう」と事前にシナリオを用意しておくイメージです 。例えば「もし前日に熱を出したら」「当日電車が止まったら」などを考え、その場合のプランBを頭に入れておくと、不安が和らぎ自信が持てるでしょう。
「自分だけじゃない」——その経験も学びに
何か予想外のことが起きると、「どうして自分だけ…」と感じてしまいがちです。しかし覚えておいてほしいのは、受験本番でのハプニングや失敗は誰にでも起こり得るということです。ある調査では、受験当日に何らかの「失敗をした」経験がある大学生が6割以上にも上ったと報告されています 。つまり半数以上の受験生が本番当日に何かしらうまくいかないことを経験しているのです。「それだけ多くの受験生が本番当日に失敗するわけだから、逆に言うとそれはよくあることで、自分だけではない」という視点を持ちましょう 。周囲を見渡せば、自分以外は皆落ち着いて見えるかもしれません。しかしそれは錯覚です。本番の会場では、他の受験生も心の中では緊張しているものです 。「みんな同じなんだ」と少し引いた目で周りを見るくらいの余裕を持つと、自分の緊張も客観視できて楽になります 。
そして何より、今日あなたが経験したハプニングは決して無駄にはなりません。たとえ思い通りにいかない朝を過ごしたとしても、それを乗り越えて試験に臨んだ事実自体があなたの糧になります。ある教育メディアでも「失敗は次に生かすことができればそれは大きな成功の一部です」と述べられています 。今回得た教訓を今後の受験や人生の糧にしましょう。例えば次の試験では起床時間や到着時間の計画を微調整するかもしれませんし、緊張との向き合い方も今回より上手になるはずです。
最後に強調したいのは、自分を信じることの大切さです。 試験直前になったら、これまで努力してきた自分を信じてあげてください。不安や焦りがあっても、「ここまでやったのだから大丈夫」「問題が起きても自分なら乗り越えられる」と心の中で何度も唱えましょう。たとえ受験当日に予想外の出来事が起きても、それも含めてあなたの実力であり、経験です。それを乗り越えて席についている自分に自信を持ち、「さあ、やってやろう!」という気持ちで本番に臨んでください。
**あなた一人ではありません。**多くの先輩たちも同じような不安やトラブルを経験し、それでも試験を乗り越えてきました。今回の経験も必ずや成長の糧になります。落ち着いて、自分の力を100%発揮できるよう願っています。健闘を祈ります!
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