記憶の断捨離は野菜室に学べ

〜覚える前に捨てる勇気を持て〜
受験勉強において、多くの学生が「覚えることが多すぎる」と感じます。参考書の山、過去問の積み重ね、予備校のテキストに学校のプリント…。どれも大事に見えるものばかり。しかし、それらすべてを抱えたままで、本当に「効率よく学べている」と言えるでしょうか?
そんなとき、私はいつも冷蔵庫の野菜室を思い出します。
そう、あの冷蔵庫の下の段のスペースです。
■ 野菜室の奥には何がある?
誰しも経験があると思います。野菜室を開けたとき、奥から出てくるしなびたキャベツ、溶けかけたキュウリ、正体不明のビニール袋…。
実はこれ、記憶の中でも起きていることなんです。
私たちの頭の中にも「野菜室の奥」があります。過去に勉強したけれどもう必要ない知識や、重複した情報、あるいは最初から意味を理解せずに無理やり詰め込んだ記憶。こうした“しなびた記憶”は、いざ新しい知識を入れたいときに、場所を取ってしまい、思考の動きを妨げます。
■ 覚える前に捨てる勇気を持て
勉強ができる人ほど、「覚えること」よりも「捨てること」がうまいものです。これは単なる情報の削除ではありません。
・自分が受ける試験で本当に必要な知識か?
・今の段階でその内容を完璧にする必要があるのか?
・今後も繰り返し出てくるテーマか?
これらを冷静に見極め、必要のないものを意識的に「スルーする」決断ができること。これが“記憶の断捨離”です。
たとえば、英語の勉強で細かい文法用語ばかりを暗記していたり、数学で難関私立校の超ハイレベル問題ばかりに固執していたり…。それ、本当に今の自分に必要ですか?
大切なのは、「合格するために必要な記憶」を優先して育てること。そのために、まず“捨てる勇気”を持ちましょう。
■ 腐った記憶を捨てろ、野菜室はそれを知っている
人間の脳は冷蔵庫と同じで、詰め込みすぎると中が見えなくなります。そして、見えなくなったものは忘れていく。忘れていいならまだしも、必要な情報まで“野菜の奥”に埋もれてしまうこともあるのです。
使っていない知識、役に立たないテクニック、すでに理解したのに「不安だから」と何度も見返してしまうページ…。
それらは「腐った記憶」かもしれません。
勇気を持って、古くなった記憶を一度見直しましょう。新しい知識を入れるスペースは、その後に自然と生まれてきます。
■ 具体的な“記憶の断捨離”の手順
受験生が今日からできる記憶の整理法をいくつかご紹介します。
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1. ノートや参考書を“見直し用”と“もう使わない用”に分ける
→ 付箋やクリップで仕分けしておくだけでも、復習の精度が上がります。
2. “もう覚えたページ”は潔く外す
→ ルーズリーフならページごとファイルから抜きましょう。冊子タイプなら付箋で「完了」マークを。
3. “苦手だけど出ない問題”は勇気を持って後回しにする
→ 捨てる勇気は、戦略的選択でもあります。
4. 1週間に一度、脳の“冷蔵庫掃除”をする
→ 過去に使った問題集やノートの内容を見返し、「まだ有効か?」を自問する時間を設けましょう。
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■ 最後に:覚えることを減らせる人が、強い
受験において成功するのは、「頭がいい人」ではありません。
「学ぶべきものを見極めて、覚えなくていいものをスルーできる人」です。
記憶の断捨離とは、勉強の“軽量化”です。荷物を軽くしてこそ、スピードは出ます。ゴールへ向かう加速力もつきます。
冷蔵庫の野菜室を、ぜひ一度見てください。そこにある現実が、あなたの勉強にもきっと活かせるはずです。
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